多和田葉子『犬婿入り』。なんだろうな…この世界観。
芥川賞は、古川真人さんの「背高泡立草」
直木賞は、川越宗一さんの「熱源」
昨日が発表だったと知らなかったので、夜、家事をしながらテレビから流れてきたニュースに、ああそういう時期だった、と思ったりしました。
と、ふと、かつて芥川賞をとった多和田葉子さんの『犬婿入り』を思い出しました。
1992年の第108回の受賞だったようで、いまからもう28年も前なんですね。
これを読んだのはいつだっただろう?
本屋さんの棚を何気なしに眺めていて、この奇妙なタイトルにひかれて手に取りました。
上の写真の帯にも「民話を巧みに取り込んだユーモア溢れる新しい小説。」とありますが、それがユーモアなのかどうか、とにかく「ヘンテコ」な感じなんです。
ある男が、学習塾を開いている女のところに転がり込んできて一緒に住み始めるんです。男は、人間なんだけど犬っぽくって、けれどなんだか温かみがあって憎めない感じです。そもそも女だって、学習塾を開いているけれど変わった人物で、つかみどころのない人です。
なんだろう。
二人には「縛り」がない?
というか、常識的な範疇でとらえることができない、ふわふわした感じ、がします。
文章はとにかく個性的で、ストーリーの奇妙さを文章がいっそう盛り上げているような感じです。読み終わっても、それが現実なのかどうかよくわからないし、とにかく「ヘンテコ」です。
でも、なんだか後を引くんです。
また読んでみたい、という気になるんです。
多和田さんの他の作品は、ほとんど読んでいませんが、この『犬婿入り』だけは、読んでから少なくとも20年以上は経っていますが、いまだに心に残っていますし、そのつかみどころのない雰囲気もいまだに好きな作品です。
賞をとる作品というのは、やはりそれだけの「何か」があるのでしょうね。
著者:多和田葉子
講談社文庫