本と本屋さん。『bookspooh』

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そして、ベッドで事件はおきた

何か小説が読みたい。

でも、どんな小説があるのかわからない。どれを選んだらいいのか、迷ってしまう。

なんてときはありませんか?

 

私が小説を選ぶとき、目安にしている一つの方法があります。

迷ったときは、作家のデビュー作を選ぶ

これです。

 

デビュー作は、どの作家も思い入れがありますし、デビューしようと必死になって自分のすべてを結集してその作品に向き合っていると思います。

だから、作家のデビュー作には、良くも悪くも、その作家の感性だとか価値観だとか、あらゆる部分が盛り込まれているように思うんです。

 

そんなわけで、本屋さんで読みたい本に迷ったときは、気になるな…と思うタイトルを探してみて、それがデビュー作だとわかればたいてい買います。

 

十数年前の私の好みのジャンルは、ミステリーかサスペンスでした。

それがいつの間にか気が付けば、エッセーや啓蒙書的なものばかりに。

それがこの夏以降、また小説を読むようになって最近は本当に久しぶりに推理小説を読みました。

 

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近藤史恵さんの『凍える島』と『ホテル・ピーベリー』です。

 

読んだあと元気になれる本」でも書きましたが、この夏に偶然に近藤さんの『スーツケースの半分は』に出会った夏以降、この人の小説ばかり読んでいます。

 

だいたいのあらすじは…

 

『凍える島』

慰安旅行と銘打って、喫茶店北斎屋>のスタッフと仲のいい得意客の合わせて男女8人は、瀬戸内海に浮かぶ孤島S島へ向かう。到着当初はバカンス気分を満喫していたメンバーだが、突然の惨事が。孤島を舞台に起こる連続殺人は、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を彷彿させる本格ミステリーです。

この作品で、作者は第四回鮎川哲也賞を受賞しデビューされています。

 

『ホテル・ピーベリー

おこした不祥事のため、職も人生も失った男。友人の勧めでハワイ島にある「ホテル・ピーベリー」に滞在することを決める。日本人オーナーとその妻が経営するピーベリーには、「滞在できるのは一度きり」という変わったルールがあった。次第にピーベリーでの生活に馴染んでいく主人公だったが、ある日起こった事件から生活は思わぬ方向へと向かっていく。

 

とまあ、どちらもミステリーなのでネタバレしない程度に書くとこんな感じなんですが、どちらも本当に面白かった!

 

同じ作者が書いたミステリーなんですが、テイストは違います。

 

『凍える島』は昔の本格ミステリーを彷彿させるテイストで、ヒロインの女性が詩を書いていたという設定もあって、文学好きを意識させるカタカナの使い方。たとえば、テエブルだとか、ボォトだとか、少し読みにくい部分もあるのですが、そういう書き方がかえって大正ロマンだとか昭和初期だとかを感じさせて私的には好みでした。

江戸川乱歩の短編小説が好きなんです。中井英夫の『虚無の供物』の世界観も好きでした)

また、この『凍える島』は殺人事件の動機も含めて、退廃美や不条理なんかのテイストも入っていて、久しぶりに読む本格ミステリーだけど読み切れるかな……という不安はどこへやら、作品世界にはまってしまいました。

犯人が判明したとき、やっぱりと思う反面、そう来たか!、と心地よい驚きがありました。

 

一方、『ホテル・ピーベリー』は、こちらの方が『凍える島』より先に読んだのですが、登場人物たちの距離のある関係、というのでしょうか、親しくないんだけど、旅先特有の「共同意識」的なものもあって、さらさらした感じが心地よかったです。

といって、決して人物描写が薄っぺらいということではありません。

この作者が書く作品は、どの人物もしっかりと描かれていて、特に女性の心理描写はピカイチだと思います。

ミステリーとしても、この先どうなるんだろう、というミステリー本来の「楽しさ」を感じられて、毎夜、ベッドに入って読むのがとっても楽しみでした。

 

久しぶりに気持ちのいいミステリータイムを過ごせました!