久しぶりに言葉で心が震えた!がんばろう!
今朝、ラジオである一編の詩が紹介されていました。
フランスで、いま多くの人々にシェアされている詩だそうです。
DJが、作家の辻仁成さんのブログで紹介されているものを見つけて、そのさわり部分を読んでくれました。
この詩は作者不明なのだそうですが、辻さんが訳して御自身のブログで紹介されました。
気になったので、すぐにネットで探してみました。
辻仁成さんのブログに載せられていたその詩がこれです。
あれは2020年の3月だった。
通りに人はいなかった。商店は閉まり、人々は家から出られなくなった。
だけど、春はそのことを知らなかった。
花は咲きはじめ、太陽が照り、鳥たちは歌い、そろそろツバメたちがやってくる頃で、空は青く、いつもより朝が早くやってくるようになっていた。
あれは2020年の3月だった。
若者はオンラインでの勉強を強いられ、家での過ごし方を工夫し、人々はショッピングも、美容院に行くこともできなかった。もうすぐ、病院に場所がなくなってしまうというのに、人々はどんどん病気にかかっていった。
だけど、春はそのことを知らなかった。
公園を散歩する季節がやってきて、草木は緑色に色づいていた。
あれは2020年の3月だった。
おじいちゃん、おばあちゃん、家族、子どもを守るため、外出は禁止されていた。集会も、食事も、家族パーティーも無くなり、恐怖は現実となって、日々は恐怖に包まれた。
だけど、春はそのことを知らなかった。
りんごやサクラの木は花を咲かせ、葉っぱは力強く育っていた。
人々は本を読み、家族と過ごし、外国語を学んだり、バルコニーで近所の人と音楽を共有しはじめた。それは、”連帯”やこれまで持っていなかった”価値観”を生むために学んだ新しい表現の方法だった。
人々は健康や苦しみ、停止してしまった世界、急落した経済の大切さに気づいた。
だけど、春はそのことを知らなかった。
花は散り、果物がなって、鳥たちは巣を作り、ツバメたちがやってきた。
そして、自由になる日が訪れた。人々はテレビでそれを知った。ウイルスは私たちに負け、人々はマスクや手袋を外し、通りに出て、歌って、泣いて、近所の人たちと歓喜し合った。
その時、夏がやってきた。
春は何も知らなかったから、ウイルスや恐怖や死とともに、春はずっとそこにい続けた。春は何も知らなかったけれど、人々に生命力というものを教えた。
全てはうまくいく。家にいよう、自分たちを守ろう、そして、人生を楽しもう。
愛し合おう。
久しぶりに、詩を読んで感動しました。
こんな風に勇気づけられる詩に、久しぶりに出会えました。
やっぱり、言葉、ってすごいなぁ、と心から震えました!
フランスと日本で状況は違います。
考え方も違います。
でも、言葉というものは、ときにはとても鋭く、とてもセンシティブに、人間の心を突き刺し、しみ込んできます。
誰が作ったのかはわかりませんが、本当にすばらしい詩だと思います!
久しぶりに言葉で感動したので、どうしても伝えたくなってこのブログでも紹介させていただきました。
1959年生まれ。作家。ミュージシャン。
1997年に『海峡の光』で第116回芥川賞受賞。