旅先での一冊。さわやかな日差しとお酒の中で。
近くにある一番大きな書店はジュンク堂書店である。
ジュンク堂にはhontoカードというポイントカードがあって、ジュンク堂、丸善、文教堂、啓林堂書店と共通のポイントカードである。
昨日たまたまジュンク堂の在庫をネットで見ていると、どこをどう押したのか、過去の購入履歴があらわれた。
改めてみると、かなりの数であった。
タイトルと写真もでるのだけれど、見ていると購入した当時の記憶がよみがえるものもあり、ついつい跡を追ってしまう。
と、一冊の本のところで目がとまる。
『マイタイム 自分もまわりも幸せになる「自分のための時間」のつくり方』
首をひねる。
買った記憶が全くない。
というか、読んだ記憶が全くない。
つまりは、どんな本だったのか全く思い出せないのである。
タイトルから、なんとなく内容は推察できるが、この本にまつわる大まかな記憶が全然ない!
本当に、買ったのだろうか。
いささか戸惑いながら画面の中を探すと、確かに購入履歴とある。
タイトルから想像するに、なんとなく自分が買いそうではあるが、何度考えても記憶がない。
買ったのに記憶にない本だと思うと、なんだか急に読みたくてしかたがなくなった。
私はたいてい書店で購入した際はブックカバーを付けてもらう方である。
ジュンク堂のポイントカードの購入履歴だから、ブックカバーは当然ながらジュンク堂のものだ。
ブックカバーと価格とタイトルからだいたいの本のサイズを思い浮かべて、本棚を探してみた。
でも、ない。
もう一度探してみる。
やはり、ない。
一瞬、捨てたのか……と思ったりしたが、ここ十数年、本を捨てたことは一度もない……はずである。
買った本を覚えていないように、捨てたことも忘れてしまったのだろうか。
少し不安にもなるが、さすがにそこまで老化は進んでいないだろう、と気持ちを奮い立たせ、もう一度考えてみる。
と、ふと気づいた。
このポントカードはジュンク堂以外の書店でも使える。
といって、家にあるブックカバーはどの店舗かほぼ言えるから、このポイントカードが使える書店で我が家にあるブックカバーはジュンク堂以外には文教堂だけだ。
そこでようやく思い当った。
何年か前に旅先で本が読みたくなって、本屋さんに立ち寄った。
そこが確か文教堂ではなかったか。
短くても、ちょっとした旅行に出ると、本が読みたくなる。
時間があるときは、行った現地でふらりと本屋さんに立ち寄り、雑誌でも本でも、気にとまった本を、たとえ普段は買わないようなものであっても買ったりする。
そうして手に入れた本を、滞在先のホテルで、朝から、あるいは昼から、まだ太陽の光がさわやかに室内を照らす時間にベッドやソファーに横たわりながら、コーヒーや紅茶、あるいは真昼間であるにもかかわらず大胆にもお酒なんかを脇において読み始める、というスタイルが、近年の私の最大のリラックスタイムであり、贅沢な至福の時間なのである。
確かこの本を買ったときも、他に気が向いた本がなく、この本も普段ならたぶん買わないだろうな、なんて思いながら、でもせっかくの旅行だし本が一冊もないのは淋しい、と思い買ったような気がする。
そんなわけで文教堂のブックカバーを探してみると、すぐにこの本が見つかった。
やっぱり、買っていたのであった。
いま、このブログを書く前にパラパラとめくってみると、
「自分への投資」として時間の使い方を考える
なんて、走り書きのメモさえ挟まれていた。
でも、やっぱり内容の記憶はない。
もう一度読み返してみようと思う。
ところで、年明けから乾燥とアレルギー(と、たぶん、ストレス)から、顔が赤くはれだした。ここ数年、乾燥の季節になるとよく出始めるのだが、右の瞼の上から始まり、いまは右の鼻の横とほほのあたり、左のほほまで拡大中。
ひどくなったり和らいだりを繰り返しの数か月であったが、病院に行きたくてもコロナ流行を考えるとなかなか行けず、とはいえ、昨夜、さすがに瞼が真っ赤に腫れて痒さからひっかいた拍子にできた小さな傷口から血まで出てきたので、ついに今日、思い切って近所の皮膚科に行ってきた。
初めていくそこは、とても親切な女医さんだった。
結局、何の病名かまでは判断できず、軽いステロイドが入った軟膏と保湿成分があるローションを処方され、いまつけているところである。
どうか薬が効いて、早く腫れと赤みが引いてほしい。
病院からの帰り道、久しぶりに出た近所の風景はいつもと同じだったけれど、少しだけ人も車も増えたような気がした。
病院も、通常よりは少ないかもしれないがそれなりに患者さんたちはいたし、前を通った郵便局にもスタッフとお客さんが見えた。
徐々に自粛ムードも緩む中、もしかしたら数週間後にはまた感染者が増え始めるかもしれない。いや、きっと、たぶん、このままではそうなるだろう。
とはいえ、生きていくためには、ずっとこのままでいるわけにはいかない。
みんな先がわからず戸惑いながらも、不安と希望、それにそれぞれの決断を胸に歩いているのかもしれない。
少しずつ、これまでとは違う「日常」が始まったと、また感じた。
そんな思いを胸に、この本がこのタイミングで見つかったのは、読め、という何かのメッセージなのかもしれない……。