珈琲豆を挽く。音楽を奏でるコーヒミル。
珈琲が好きである。
ときどき、紅茶党になることもあるけれど、朝はほぼ珈琲を飲む。
豆が切れていたりして飲めないときは、なんとなくスッキリしなくて物足りない。
豆は、ただでさえ時間の足りない朝に挽くことは大変すぎるので、日中に2日分ほどをまとめて挽いて、冷蔵庫に保存しておく。
そもそも、豆から挽くようになったのは、一年くらい前からだろうか。
始まりは、『大どろぼうホッツェンプロッツ』という児童書である。
ドイツの作家プロイスラーが書いた児童文学シリーズの第1巻なのだが、ここにとても変わったコーヒー挽きが登場するのである。
このコーヒー挽きは、孫とその友達がおばあちゃんの誕生日プレゼントに作ったもので、ハンドルを回すと音楽を演奏し始めるのだ。大どろぼうのホッツェンプロッツがそれを盗んだからさあ大変。ホッツェンプロッツを捕まえようと少年2人が奮闘する、というのがおおまかなあらすじである。
日本での初版は1966 年。56年も前に登場しているのに、廃刊になることなくいまだに読み続けられているのだからその人気は確かなものだろう。
とはいえ、何十年も前、小学生だった私は図書館で何度もこの表紙を目にしていたが、どうにも読む気にはなれずに大人になった。
それが我が子が小学生になって手に取ったのをきっかけに、読み聞かせをすることになったのであるが、これがなかなか面白い。スリルもあるが、ユーモアもある。先の展開がどうなるのだろうと、気になってしまう。
さて、問題のコーヒー挽きだが、それが登場して音楽を奏でる様子がとても楽しそうに描かれているので、読んでいるうちにだんだん珈琲が飲みたくなってきて、挙げ句の果てには自分でも豆を挽いてみたくなった。
とはいえ、面倒くさがりの私は、使った後のお手入れも嫌だったし、コーヒーミルを買ったところで続くかどうか自信もなかった。
でも、豆は引いてみたい。
できることなら、小説に出てくるような、ハンドルを回すたびに音楽を奏でる楽しいミルを挽いてみたいが、さすがにそれは無理そうだ。
結局、デザインも造りもシンプルで、お掃除も楽チン、かつ安価なミルを探し出し、購入。
ハンドルを回して挽くたびに思いの外、力が必要であるが、挽いてときに立ちのぼる香りの良さが何ともいえず、味も、粉よりもおいしく、何より自分の好みの味にいくらかは調整できるところが嬉しい。
以来、珈琲豆を挽いている。
豆から買うようになって、自分の好みも少しはわかるようになってきた。
どうやら私は、少し酸味のある味が好きなようだ。
凝りだすと、入れ方ももう少し研究してみたくなるのだが、ゆっくりと珈琲を入れる時間はいつもいつも後回しになってしまい今に至っている。