本と本屋さん。『bookspooh』

心を癒してくれる読書と本屋さんが大好きです。町の本屋さんを応援しています!

本屋さんで本を買う

以前、大阪の小さな本屋さんを取り上げたテレビ番組が放送されていた。

隆祥館書店という本屋さんだ。

 

様々なイベントを企画したり、いろんなマスコミで紹介されているみたいだから、ご存知の方も多いかもしれない。

場所は、大阪メトロの谷町六丁目駅の7番出口の向かい側にあるらしい。

テレビ画面に見る限り、外見も店内も「昭和」である。

子どもの頃によく行った近所の本屋さんのそれである。

 

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(※上記写真は、隆祥館書店さんのブログに掲載されていたものを転載させていただきました)

 

子どもの頃は、こうした雰囲気の本屋さんが町にも多くあった。

当時は、どちらかといえば本が苦手であった私も、漫画は買いに行ったものだ。

うちの近所にあった書店は文庫本、文芸本、漫画、雑誌などが中心においてあったように記憶しているが、気が付けばいつのころからか、雑誌と漫画が中心になっていき、文庫本がお義理程度に並んでいるように変わっていった。

そうした期間が何年間か続き、気が付けば、その本屋は閉店していた。

そこだけではなかった。

町にあった多くの書店がそんな感じで消えていった。

駅前にあった、比較的新しく漫画や雑誌だけでなく文庫本も文芸書もそれなりに充実して並んでいた本屋さんも、確か数年前に閉店していた。

悲しかった。

生まれ育った町には、落ち着いた本を探すために足を運びたくなるような本屋さんが、いつの間にかなくなっていた。

 

今回、テレビで紹介されていた隆祥館書店さんは、創業70年を越える歴史を持つ立派な本屋さんだ。

父が始めた本屋さんを、いまは娘さんが引き継いでおられる。

この本屋さんにくるお客さんは年齢も性別もさまざまだ。店主の二村知子さんに本のことを尋ねたりしながら、それぞれが求める本のイメージを店内で具現化していって買っていく。あるいは、お目当ての本を探しにやってくる。

テレビを見ていると、お客さんは単純に本がほしくて隆祥館書店にやってくるのではなく、店主二村さんのお人柄や心の交流を求めてやってきているように感じられた。それこそ、地域に根付いた「小売店の姿」だと思う。

こういう本屋さんが近くに存在していることは、住人にとっても心強いと思う。

気分が向いたときに、近くに馴染みの本屋さんがあるのとないのとでは、地域の住み心地が大きく変わってくると個人的には思っている。

 

ところで、番組内でとても気になるところがあった。

以前から、大手書店と小さな書店では本の納品システムに大きな隔たりがあり、町の書店は発注しても入ってこないという現状があるということは聞いて知っていた。

しかし、映像を通し直に見ると、いっそうのリアルさをもって胸にぶつかってきた。

ただの本好きの素人で、業界のことは知らない人間が口を挟むことではないかもしれないが、小売店が商売を続けていくには、売れる商品を仕入れて売って、そしてまた商品を買って売って、というシンプルな構造が商売の基本だと思うのだけれど、書店業界においてはこのシンプルな基本構造さえも成立しない「お約束」的なルールがあるようで、これでは、若者の活字離れやネット通販が主流という時代の流れ的な要因を省いても、小さな書店が経営を存続していくことは難しいように思える。

 

これまでは、町の本屋さんが消えていく大きな理由は、単純に活字離れやネット通販が増えたから、程度に考えていたのだが、果たしてそうなのか。

集客のため、どの本屋さんも知恵をしぼり、店内の置き方やポップを工夫したり、イベントを企画したり、多くの町の本屋さんは色んなことを必死になって試されていると思う。でも、個人の頑張りとは別のところで、業界の構造はどうなのだろう。書店業界の「常識的なルール」にも問題があるのかもしれず、そうなると「みんな」が生き残るために業界全体で同じ方向を向いて考え取り組んでいかなければいけない、とても大きな問題であるのかもしれない。

何も知らずに、無邪気に「町の本屋さんを応援します」なんて言っていた自分が、いまがんばっている町の本屋さんたちに申し訳ない気持ちになってきた。

といって、いま私にできることはネットではなく町の本屋さんから直に本を買うことか、たまにこうしてブログで本屋さんを紹介するくらいしかできないので、自分ができる小さな応援の仕方で、一軒でも多くの町の本屋さんの生き残りを陰ながら応援していきたい。